最後に生き残るもの、それは強者ではなく変化できる者。
それは人だけでなく、会社などの組織においても言えること。
どの会社も能力の高い人材を常に求め、会社発展のために自ら進んで改革してくれる人間を獲得しようとしたり、また社内でもそういった人間を育てていこうと懸命です。
能力の高い人間、これまでの古いやり方を打ち壊し新しいものを作り出してくれる人間を、会社組織は常に求めているのです。
…なんて思っていませんか?
だとしたら、あなたは大きな勘違いをしているかもしれません。
もしあなたがサラリーマンなら、このまま行くと会社から放り出されてしまうことになるかもしれませんよ。
実は会社が本当に求めている人材は、全く違うのですから…
会社は一体どんな人材を求めているのか、どんな人間が組織の中で生き残れるのか。
僕自身がサラリーマン人生を通じて理解した「会社の本音と建前」というものを、今回はお話します。
もしあなたが
「会社と合わない」
「会社が何を考えているのか分からない」
「自分がどういった立ち位置にいればいいのか分からない」
そんな悩みを持っているのなら、今回の話は役に立つのではないかと思います。
会社の本音と建前
「最後に生き残るもの、それは強者ではなく変化できる者。」
最初に僕の言ったこのセリフ、これは本当です。
これまでの地球の歴史を見ても、それが真実であることは明白です。
分かりやすい例を挙げれば、あれだけ大きくて強かった恐竜も、環境の変化に対応しきれずに絶滅してしまいました。
そして生き残ったのは小さな生命たち、刻一刻と変化し続ける環境に対し柔軟に対応(変化・進化)できた小さな生き物たちです。
ゴキブリに至っては、恐竜が現れる前の時代から繁栄していました。
なぜヤツらは地球上での大きな環境変化の中、生き残ってこれたのか?
その理由は、ヤツらは決して強い生き物ではありませんが、その環境適応能力が尋常ではないからです。
どんな環境でも自らを変化させ、そこに適応していく。
新しい殺虫剤が登場しても、すぐに耐性を付けてそれを上回ってしまう。
まさに変化できる者こそ最強なのです。
でもこの真理、頭では理解できても本当の意味で受け入れることはなかなか難しい。
特に日本の会社組織などでは、それが顕著に現れているように思えます。
よく会社の面接でも、面接担当者の口から
「我が社に新しい風を吹き込んでくれるような人材が欲しい」
みたいな感じのことを言われますよね。
僕も昔、ある会社の面接で一度言われたことがあります。
でもこの言葉、真に受けてはダメですよ。
いや、もしかしたらその人は本気でそう思っているつもりなのかもしれません。
ですが深層心理では、実はこれと全く反対のことを考えていることがよくあるんです。
基本的に人間というのは、「変わりたくない」のです。
いえ、「変わるのが怖い」のです。
リストラ・左遷・降格される理由
日常生活において、命の危険にさらされる心配が基本的に無くなった現代の日本社会。
実はこの現代社会、何十万年と続く人類の歴史からすればほんの一瞬なんです。
人間の歴史のそのほとんどは、日常的に命が危険にさらされている状況を生き抜いてきたのです。
分かりやすく説明すると、例えば原始時代がありますよね。
人間の歴史の中でも圧倒的に長いのは、実はこの時代であり、原始時代はまさに毎日が危険と隣り合わせの連続でした。
こんな時代に何か新しいことにチャレンジしようとすれば、どうなると思います?
「俺たちが今いるこの森より、あっちの森の方が木の実がたくさんありそうだから移動しようよ。あっちの森はこれまで一度も行ったことのない未知の世界だけど、な~に、思い切って飛び込めば何とかなるさ!」
そうは言っても、あっちの森には獰猛(どうもう)な獣や危険な生物がいるかもしれないし、木の実が豊富であれば他の部族がいてもおかしくありません。
この時代にこんなチャレンジ精神満々だったら、命がいくつあっても足りませんよね。
この時代で生き残る方法、それは「チャレンジしないこと」です。
現状を維持し、変わったこと・やったことの無いことをしないことなんです。
確実に安全な道を選び、分からないことはできるだけやらないことが生き延びる一番の方法なんです。
つまり現代の「積極的にチャレンジしよう!」みたいな発想は、人類の歴史においてはほんのつい最近現れたばかりの新しい考えであって、人間の行動を支配しているのは「今あるものを変えると命を落とすぞ!」という本能からの命令なのです。
で、話は戻るのですが、会社組織というのは口では「新しい風を」「改革していこう」なんてこと言いますが、本能からの「今あるものを変えると危険だぞ!変えるな!」という命令にはなかなか逆らえないのです。
会社としては有能な人材が欲しいのですが、しかしあくまで会社の方針に沿って従順に頑張る人材が欲しいのです。
会社の方針に従わないような人間などもちろんいらないし、会社のルールを変えていく人間、例え良い意味で会社のルールややり方を改革していくような人間さえもいらないのです。
もしピンと来ないようなら、例えば田舎の小さな島や村なんかをちょっと思い浮かべてみて下さい。
そういうところって、その土地特有の古くからあるルールや決まりごと・やり方なんかがありますよね。
そこへ都会からよそ者が突然引っ越してきたとします。
そしてその者はその土地のルールに従わず、むしろそんな非合理的なやり方はやめて、もっと要領よく合理的にやろうよ!と言ってこれまでのやり方を無視してどんどん新しいやり方をし始めたら、村人はどういった反応をするでしょうか?
間違いなく強い拒否反応を示しますよね。
この拒否反応はまさに、これまでのルール・環境を変えられてしまうことへの不安、恐れの心です。
都会から来た者の言うことが正しいとしても、理屈では理解できても本能が拒否をしてしまうのです。
これは会社組織でも全く同じなんです。
会社を改革してしまう可能性のある人間に対し、表面上は期待する素振りを見せていても、人間の本能はこういった人間を恐怖に感じ、排除しようとしてしまうのです。
特に男性は、自分より能力の高い人間、自分の地位を脅かしそうな相手、自分ができないことをやってしまうような人間に対し、無意識の内に恐れの心を抱いてしまうことが多いのです。
僕がこれまで経験してきた会社でも、やっぱり同じでした。
以前僕がいた会社では、社長の右腕でその会社を引っ張るリーダー的役割を担っていた人がいたのですが、いつしか社長の権限を超えるほどのリーダーシップを発揮してしまい、ある日突然解雇となってしまいました。
その後、その人の後釜としてある人物が副社長としてヘッドハンティングされてきたのですが、この人も残念ながら同じ末路を迎えてしまいました。
この人はかなり仕事のできる人で、これまでの会社のやり方をどんどん改革していき、短期間で実績を上げることに成功しました。
でも社内のルールや方針をどんどん変えていってしまった結果、やはり解雇となってしまいました。
他にも多くの人間が、解雇・左遷・降格されるのを、僕は目の当たりにしてきました。
多くの人間というのは、変化することを本能レベルで恐れ、これまでのルールや環境を変えることを避け、「これまでと同じ」「みんなと同じ」ということに安心を覚える生き物なんです。
それは会社組織でも、他の組織でも同じです。
もしこれからもあなたがサラリーマンとして生きていくのであれば、このことを理解しておかなければなりません。
でないと、いつかとんでもない落とし穴に落ちてしまうこととなりますよ。
この人間の本能を理解しておかないと、あなたにどんな才能や能力があっても、それを生かしきることはできないのですから。
会社のルールは変えることができる!!
ここまで僕の経験を踏まえて話をしてきましたが、何だかだんだん暗い気持ちになってきましたね…
サラリーマンってホント面白くないですね。
でもね、あなたがその気になれば、実は会社のルールだって変えることはできるんです。
ここでちょっと、僕の昔の上司の話をさせてもらいます。
その上司はある病気のため、もう亡くなっているんですが、その上司が生前言っていた言葉があります。
その言葉とは、
『出る杭は打たれるって言うだろ。お前らは出方が中途半端だから上から叩かれるんだ。俺のように天井まで飛び出してみろ。見てみろ、誰も手が届かなくて叩けないだろ。』
この上司はとても仕事のできる人で、自分が気に入らなければ会社の決定すらも一言でひっくり返してしまう、そしてそれに対して周りの誰も一切文句を言わない、それほど突出した人でした。
この上司は、「実力を発揮して上の人間や周囲を完全に認めさせると、自然とその人間の決めることが会社のルールへと変わる」ということを、身をもって僕に教えてくれました。
変えようと思えば、会社の方針やルールだって自分の実力で変えてしまうことはできるんです。
ただこの上司のようなやり方をしようと思えば、正直簡単ではありません。
それにただ単に自分の実力を発揮すれば周りの人間が付いてきてくれる、ということではないんです。
もちろん実力があるに越したことは無いんですが、実はそれ以外の要素こそ大切になってくるんです。
僕の上司は確かに実力はありました。
でもなぜ周りの人間が誰も文句を言わずに付いてきていたのか。
その上司の言うことが正しいから?
確かにそれもあるかもしれません。
でもいくら正しくても、その人間が会社や周りの従業員のことなど顧みず自分の利益ばかりを追い求めるような人間なら、誰も付いていくことはありません。
その上司は、会社のこと、お客さんのこと、そして一緒に働く従業員のことをいつも考え、全てが上手くいくように、全ての人間が満足できるような道を常に考えながら仕事をしていました。
そして僕ら社員は、「この人は必ずや会社の状況を良い方向に変えてくれる、この人に付いていけば必ずや全てが良くなっていくはずだ」と信じていました。
この上司は、僕ら社員、そして経営者にすらも「この人間なら会社を良い方向に引っ張って行ってくれる」と感じせ、信じさせるものを持っていたのです。
この上司は、周りの人間全てが希望を託せる存在だったのです。
人を動かし、会社すらも動かすために必要なこと。
会社や経営者を動かすには、実力も必要です。
実力があれば、それだけ説得力も増します。
でもそれ以上に大切なことは、周囲から人間的に信用・信頼される存在になること。
そこを目指すこと。
信頼される人間の周りには、自然と人が集まります。
何をするにしても、周りの人間が自然と応援してくれるようになります。
助けが必要な時は、勝手に周りが支えてくれるようになります。
会社を良くしていこうと行動を起こせば、周りは希望を託し、後押しをしてくれるようになるのです。
その後押しは次第に大きな流れを作り出し、やがてそれは会社のルールすらも変える大きな力へと変わっていきます。
会社のやり方やルールを変えるには、まずは周りから信頼されること。
共に働く従業員、部下、上司、経営者から信頼され、希望を託せる存在になること。
これはそう簡単なことではないかもしれません。
でもそれを目指してみませんか?
頑張っても、なかなか思うような結果を出せれないかもしれません。
でも目指す価値はあります。
なぜならここを目指していくと、あなたのいる職場がいつの間にかあなたにとって働きやすい職場へと変わっているはずですから。
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