僕の知り合いに、何でも統計を持ち出してくる男がいる。
「お金持ちの家に生まれた人間は恵まれた環境で教育を受けさせてもらえるから、結局親と同じように金持ちになれる。逆に貧乏な家庭に生まれた人間は、いくら頭が良くても大学などに行くお金が無いから、結局貧乏なままでそこから這い上がることは出来ない。もちろん例外はあるかもしれないが、統計を出すと、そのことがはっきりしているんだ。つまり生まれた時からすでに、その人間がどんな人生を歩むかなんてのは実はだいたい決まってるってこと。例外的に貧乏人がお金持ちになることもごくわずかにあるが、それはその人間が奇跡的に運が良かったりしただけであり、そんな統計上ごくわずかな話をしたところで仕方がない。統計こそが全てを物語ってくれる。みんな、いつまでも夢見てないでちゃんと現実を見つめようぜ。」
と、いつもこんな調子だ。しかも残念なことに彼の統計はいつも、ネガティブな答えを導き出すために使われる。そんな彼の話を聞くたびに僕は、「あぁ、これまで彼の中にあったはずの数多くの可能性を、彼はどれだけ自らの手で潰してきたのだろうか……」と、残念な気持ちになる。そして自らの可能性を自分の手で潰してきたように、もしかすると周りの人間の可能性も知らず知らずのうちに彼は握り潰してきたかもしれない。
とは言っても、統計から傾向を読み取り状況を分析していくという彼の考え方は、間違っているとは思わない。例えば会社の経営や商売、または受験などにおいて、成功するためには必ず戦略や戦術が必要になってくる。そして計算された戦略や戦術を練るためには、統計に基づいた数字によって世の中の動向などをより正確に読み解いていかなければならない。一か八かの行き当たりばったりでは、成功し続けることなど決して出来ない。
実際に僕自身も、統計を参考にすることはよくある。無駄なリスクは極力背負いたくないし、可能性の無いことに時間を費やすほど僕も暇ではない。でも統計に対して、彼と僕とでは決定的に違うことがある。
1%の成功者になるために必要なこと
例えば会社で、ある商品を売るように指示が出たとする。会社の営業部門100人が商品を売るために営業をかけたが、結局100人中5人しか商品を売ることが出来なかった。
すると統計好きな彼なら、「100人中5人しか売れないということは、95%の人間が売れなかったということ。つまり、この商品は売れないということだな。」そう言うだろう。
しかしこれが僕なら、「こんなに売れない商品でも、売ってきたヤツが5人いるのか。つまりその5人はこの商品を売るための何かしらの秘策を持っているんだな。ということは、徹底的にそいつらを研究して同じことをすれば、俺も5%の中に入れるということになるな。ニヤッ。」そう考える。
僕はこれまで、様々な成功者を観察してきた。みんなが失敗したり上手くいかない中、成功し続けているごくわずかな人間を見つけては、その人間と接触し、話をするようにしてきた。99%のその他多数と1%の成功者、両者にはどんな違いがあるのか?同じ人間なのに一体何が違うのか?その違いをずっと考えてきた。その結果、両者の間には”ある決定的な違いがある”ということに気づいた。
統計好きな彼が言うように、成功できる人間と言うのは確かに環境に恵まれていたりするってのはよくある話だ。しかし僕が実際に接触して気づいた「99%のその他多数と1%の成功者の根本的な違い」の答えは、環境の違いなどではなく「成功し続ける人間というのは、他の人間とは思考回路がまるで違う」ということだった。
成功し続けられる人間は、価値観や、ものの考え方や受け止め方・感じ方までもが僕らとはまるで違う。どんな状況に身を置こうとも、成功する人間は必然的に成功してしまう思考回路を持っているということ。例え恵まれない環境であっても、成功するための思考回路に従って行動することにより、結局最後は成功してしまう。
統計好きな彼が言うには「金持ちの家庭に育った人間は、同じく金持ちになる」らしいが、では例えば一代で大きな財を成した大会社の二代目が、初代と同じように会社を大きく発展させられるかと言えば、そうとは限らない。初代が築き上げた会社をさらに大きく発展させる二代目もいれば、反対に会社をダメにしてしまう二代目も実際に多くいる。むしろダメにしてしまう二代目の方が多いのではないだろうか。
その違いであるが、初代が築き上げた会社をさらに発展させられる二代目というのは、初代の持つ成功者の思考回路を叩き込まれていたり、または初代の持つ成功者マインドを見事に受け継いでいたりする。
逆に初代の作り上げたものをダメにしてしまう二代目と言うのは、ただ単に初代の築き上げた財産を譲り受けただけであり、初代の持つ成功するための思考回路やマインドなどをまるで受け継いでいない。成功するための思考回路を持っていないわけだから、どんなに良い条件がそろっていても当然成功するわけが無いということ。
僕らが成功するためには、環境が良ければ良いほど有利になる可能性はあるかもしれない。でも環境というのは成功するための決定的な要因には決してなり得ない。僕らが成功しつづけるために必要なのは、成功者の持つ思考回路でありマインド。それ以外は単なる付属品であり、付属品だけで成功し続けることは決して出来ない。
だから成功者の思考回路やマインドを身に付けるためにも、たくさんの”成功し続けている人間”を自分の目で観察し、研究して欲しい。自分と何が違うのかを、単なる表面上の行動ではなく、その人間の持つ思考回路、価値観、信念、感覚、発想、覚悟、人生観…そういった目に見えない内面的なものをぜひ観察し、学んで欲しい。
例え99%の人間が失敗したとしても、1%の成功者がいるなら、それは成功できる可能性が残されているということ。そしてその1%の人間は、成功するために必要な思考回路を持っている。その思考回路を手に入れれば、いつしかあなたも1%の成功者の仲間入りが出来るはずだ。
そして99%の上手くいかない人間たちと同じことをしてても、残念ながらその先には「上手くいかない人生」という未来しかやって来ないだろう。なぜなら統計によってすでにその結果が出ているのだから。
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