このタイトルが目につくということは、あなたは会社や何らかの集団のリーダー、もしくはまとめ役ですよね?
そしてあなたの下の人間が、あなたの言うことを聞いてくれない、あなたの思うように動いてくれない、そんな悩みを抱えているんですよね。
複数の人間を一つにまとめ、指示を出し、そして目標を達成したり結果を出したりするというのは、本当に難しいものです。
人間というのは、自分勝手な生き物です。
みんな、思い思いに好き勝手なことを言います。
だから、みんなの意見や思いを一つにまとめるというのは、本当に大変です。
10人いれば10通りの考え方があるわけだから、そもそもみんなの意見がピッタリ一致するなんてこと自体、無理な話です。
では自分がリーダーという立場である時、どうやって集団をまとめていけばいいのか?
みんなの心を一つにし、自分を中心として目標を達成したり成果を上げていくには、何が必要なのか?
僕自身の経験を交えながら、話していきますね。
人生観を変える出会い
僕は14年ぐらい前に、ある会社に就職しました。
そしてその後、その会社で7年半ぐらい勤めました。
僕はその会社で社会人としての基礎を学ばせていただいたのですが、その時に出会った上司の話をちょっとさせてもらいます。
当時の僕は27歳で、ある人物からスカウトされて入社しました。
スカウトといっても、僕自身社会人としての実績も全く無かったため、一応当時その会社の役職者の人に面接してもらうこととなりました。
その役職者の人は、その後僕の直属の上司となり、僕にたくさんのことを教えてくれることとなるのですが、僕と親子ぐらい歳の離れた人でした。
僕を面接してくれた役職者のMさんは、その会社でもかなりの古株の人でした。
会社の形がまだしっかり出来上がっていない初期の時代から在籍している人で、自分が会社をここまで大きく成長させたのだという自負があり、かなりの愛社精神あふれる人でした。
事前にMさんの情報を耳に入れていた僕は、面接でMさんからどんなことを言われるのかと、少しドキドキしながら面接に臨みました。
しかしMさんの口から出てきた言葉は、僕がまるで想像もしていなかったような言葉でした。
ある程度型通りの話をした後、いきなりMさんの言った言葉はこれです。
「この会社に骨を埋めるつもりで入社する必要は無い。」
正直、頭の中が「?」だらけになりました。
事前に、Mさんは会社に対する思いが誰よりも強く、愛社精神にあふれた人だと僕は聞いていました。
そんなMさんの口からそんな言葉が出てくるなんて全く予想もしていなかったので、僕は言葉に詰まってしまいました。
するとMさんは、こう言葉を続けました。
「私たちのやっている仕事は、楽ではない。
大変なこと、しんどいこともある。
でも、とりあえず頑張ってみろ。
ここの仕事は、本当に勉強になる。
ここで頑張って仕事をすれば、君は必ず大きく成長出来る。
それでもし、君がこの会社でずっと頑張っていきたいと思うのなら、ぜひこの会社でずっと頑張ってくれ。
でももしこの会社が傾くようなことがあり、その時もし君がこの会社よりも活躍できるような会社があったのであれば、遠慮なく飛び立て。
ここでしっかり実力を付け、飛び立つべき時が来たと君が判断したなら、遠慮なく飛び立て。」
そうMさんは言いました。
面接でいきなりこんなこと言われるなんて思ってもいなかったので、正直僕は面食らってしまいました。
そしてそれと同時に僕は、僕に対するMさんの熱い思いを受け止めました。
「あぁ、この人は本気だ。
人一倍愛社精神の強い人だが、その愛社精神に負けないぐらい僕の人生とも真剣に向き合おうとしてくれている。
赤の他人である僕の人生のことを真剣に心配し、真剣に考えようとしてくれている。
この人は、本気で僕と向き合うつもりだ。」
そう感じました。
まさに、僕の人生観を変える出会いでした。
リーダーに必要なもの
この会社に入社してからも、Mさんに対するイメージは変わりませんでした。
何をするにも全力で取り組む。
どんな仕事であっても、たとえ新入社員がやるような仕事であっても、嫌な顔一つせず決して手を抜かない。
そして、入社面接の時に僕と真剣に向き合ってくれたように、他の社員に対しても同じように真剣に向き合い、一人ひとりのことを本気で考える。
Mさんを通して僕は、真のリーダーのあるべき姿を学ばせてもらいました。
一般的にリーダーというと、組織の向かうべき方向を定め、その方向にみんなを導くのが役割。
個々の動きではなく全体を見渡し、広い視野でものごとをとらえる能力が求められます。
だから一人ひとりのことを、いちいち気にかけるようなことはしない、そんなことはリーダーのすべき役割ではない、そう考えられがちです。
でもね、実は優秀なリーダーほど、一人ひとりのことをよく見ているのです。
部下や下の人間の、ちょっとした変化も見逃さない。
表面上の行動だけを見るのではなく、その行動から相手の気持ちや心の動きを想像し、相手のことを理解しようとする。
優秀なリーダーは、命令によって相手を強制的に行動させるのではなく、相手の心を動かすことによって自主的に行動させるのです。
チームが一丸となってまとまり、メンバー同士の連携も良く、リーダーの指示がスッと通る組織というのは、例外なくリーダーとチームメンバーのコミュニケーションが日頃から取れている。
リーダーがメンバー一人ひとりのことを気にかけ、自らコミュニケーションを取り、相手を理解する努力をしている。
相手のちょっとした様子の変化にも気づき、様子がおかしければ声をかけるなど何らかのアクションを自分から起こす。
そして、そんなリーダーの心遣いに気づき、チームの一人ひとりが
「リーダーは私のことを、いつも気にかけてくれている」
「リーダーは、私のことをちゃんと見てくれている」
そう感じ、リーダーへの信頼は強くなり、リーダーを中心にして組織はまとまっていき、強くなっていく。
逆に、リーダーが一人ひとりのことを全く気にかけないような組織は、遅かれ早かれ崩壊します。
リーダーに一番求められる能力というのは、”求心力”だと僕は思います。
周りの人間を惹き付ける力、他人を引き寄せ自分を中心にものごとを展開していく力がリーダーには必須の能力です。
もしあなたがとてつもないカリスマ性を持った人なら、そのカリスマだけで周りを惹き付けることが出来るかもしれません。
でもカリスマ性では、組織をまとめるには弱すぎる。
人の心を惹き付け、組織としてまとめていくには何が必要か?
あなたが強い求心力を身に付けたいのであれば、”人が本能的に一番望んでいること”を、あなたが満たしてあげればいい。
人が本能的に一番望んでいること、それは“人から理解されること”。
みんな自分のことを「見てもらいたい、気づいてもらいたい、分かってもらいたい、知ってもらいたい、理解してもらいたい」、そう心の中で望んでいます。
だからあなたが、みんなのことを気にかけてあげればいい。
たとえ相手のことを理解出来なくても、理解しようと努力する姿を見せてあげればいい。
それだけで、人は嬉しくなるものです。
それだけで相手のことを信頼したくなる、味方をしたくなるものです。
あなたがもし、みんなの心を一つにし、あなたを中心として目標を達成したり成果を上げていく組織・チームを作っていきたいのであれば、あなたの部下や仲間・後輩のことを普段から観察し気にかけてあげるようにしてください。
もちろん部下が何百人・何千人といるような組織であれば、ちょっと無理ですよ。
あくまで自分の出来る範囲、自分の手の届く範囲で、意識してみて下さい。
出来るリーダーというのは、たとえ相手が末端の社員であろうと、一人の大切な仲間として扱います。
相手が自分よりずいぶん若くても、また何も分からない新人であっても、共に歩む仲間として相手のことを気にかけ、意思の疎通を図り、一人ひとりと信頼関係を築きます。
仲間である限り、どんな相手であってもその他多数といったような扱い方は決してしない。
リーダーであるあなたが変われば、組織も変わる。
組織が良くなるも悪くなるも、リーダー次第なのです。
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