「9つのピース」第7話

9-pieces

■7つ目のピース

退路を断て

人生には、必ずリスクがつきものです。「絶対に大丈夫」、そんな100%保証された人生など、どこにもありません。だからみんな、もしものリスクに備えて様々な保険を掛けようとします。生命保険や車の任意保険、火災保険や学資保険…リスクを回避するために様々な保険を掛けます。

受験なんかでも、本命の学校以外にも「滑り止め」として、いくつか受験しますよね。もし本命に落ちたら行く学校が無い…なんてことにでもなったら大変ですもんね。

取り返しのつかないような事態を避けるために、常に複数の道を確保しておく。これは当然のことであり、賢く生きていくためには常に複数の可能性、複数の選択肢を確保しておくべきです。

 

と、まぁここまでごく当たり前の話をしていますが、もしあなたが本気で人生を変えたいと思っているのなら、あなたの持っているその複数の選択肢、捨ててください。

「いやいや、何言ってるんだ⁉」
そんな声が聞こえてきそうですね(苦笑)
どういうことか、これから順を追って説明していきます。

本日の話のキーワードは【退路を断て】です。

 

当たり前の話ですが、人生は一度きりです。ちょっと失敗したからといって、ゲームのように時間を遡ってやり直すなんてことは当然できません。大きな失敗、取り返しのつかない失敗をして転んでしまえば、体勢を立て直したり失敗した分を取り返すために多くの時間と労力を要することになるかもしれません。

だから失敗しても大きな痛手を被らないように、人生に様々な保険を掛けたり、または今進んでいる道が閉ざされてしまってもすぐ別の道へ進めるように複数の選択肢を持つ。こういった考えについて、僕は間違っているとは思いません。

例えば一昔前だと、サラリーマンの収入源は会社から支給される給料だけでした。でも今の時代、会社の倒産、リストラ、減給などが当たり前のように起こっています。収入源を会社だけに頼っていては危ない、そう考えて最近では副業などをすることによって複数の収入源を持つ人も増えてきました。実際に僕も収入源は複数持つようにしていますし、削れるリスクは出来る限り削るべきです。

でも実は人というのは、選択肢が増えれば増えるほど迷いが生じるものなんです。

なぜかというと選択肢というのは、見方を変えると「逃げ道」でもあるんです。つまり選択肢が増えれば増えるほど、それだけ逃げ道が増えていくということ。そして逃げ道が増えるほど、自分がやろうとしていること・やるべきことがあっても、それをやらなくていい理由や、やらないための言い訳がどんどん頭の中に浮かんでくるものなのです。

例えば、「大変だけどとてもやりがいのある職業」があるとする。そして自分は、昔からずっとその仕事をしたいと考えていた。念願が叶い、その職業に就くことが出来ることになった。でも他の仕事も探してみると、実は他にも自分の出来そうな仕事がたくさんあることに気づいた。

すると、元々やりたかった職業に対し、
「もっと楽で楽しい仕事があるんじゃないか?」
「やりがいよりも、リスクの低さを重視すべきじゃないか?」
「もっと他に、自分に向いている仕事があるかもしれない」
このように、その職業をあえて選ぶ必要のない理由が、頭の中にどんどん浮かんでくる。そうすると最後は、自分がなぜその職業を選ぼうとしているのかさえも分からなくなり、どの方向に進めばいいのかすら自分でも判断できなくなってしまうのです。

もしあなたが今
・どうしても進みたい道
・どうしてもやり遂げたい事
または
・どうしてもやり遂げなければならない事

そういったことがあるのなら、出来る限り他の選択肢を切り捨ててください。本気で道を切り開きたければ、必要の無い選択肢は全て切り捨てる。自ら逃げ道や退路を断つのです。

そして逃げ道や退路が無くなれば、その途端に世界はシンプルなものへと姿を変えます。これまでたくさんあった脇道が消え失せ、道がたった一つになる。

今の自分にとって必要の無い道を消してしまえば、自分の進むべき道にしか進まざるを得なくなり、それによって心の迷いは無くなります。逆に選択肢が増えれば増えるほど迷いが生じ、力が分散されていく。むしろ選択肢が増えるほど、自分の進むべき方向に集中できなくなり、その結果やること全てが中途半端になってしまう。ぼんやりとした、中途半端な人生になっていくのです。

選べる道が少ないから苦しいのではなく、実は選択肢がたくさんあるからこそ苦しくなる。逆なのです。

無駄な選択肢が無くなり、進むべき道がたった一つだけになってしまうと、苦しくなるどころか逆に気持ちが楽になっていきます。逃げ道が無くなることにより苦しくなるどころか、むしろ頭の中がすっきりシンプルになり気持ちが楽になっていくのです。

とは言っても、もちろん僕はあなたに「命を懸けろ」とか「家族や大切な人、周りの人たちが危険にさらされても構わない」なんて言っているわけではないですよ。

いくら自分のやりたい事でも、それが現実的かどうか、常に広い視野で冷静に見極めなければなりません。周りにどんな影響を与えるかということも、把握しておく必要があると思います。

でもどんな判断を下すとしても、あなたの人生です。あなたの人生において決断を下す権限を持っているのは、あなただけです。そしてその決断に対し、責任を負うのもあなた。

何事も、やってみなければ結果は分からない。行動してみなければ、成功するのか失敗するのかは誰にも分からない。決断するのは、あなた。結果に対し責任を負うのも、あなた。

このように言ってしまうと、とても不安な気持ちになってしまうと思います。選択肢を捨て、逃げ道を断つというのは、とても勇気のいることです。

でも、人生において不安が一欠片(ひとかけら)もない人なんて、一人もいません。

自分の現実を最終的に変えることの出来るのは、自分の起こす行動。行動を起こさなければ現実は変わらないし、自分の望む人生を創りだすことも出来ない。自分が行動しなければ、何も変わらないのです。

そして今ある現実を変えていくためには、今までとは違う行動が必要です。今までと同じ行動をとっていれば、今までと同じ日常、これまでと同じような人生しか待っていません。これまでと違う現実を創り出したいのであれば、これまでとは違う行動をとらなければ、決して変わることはありません。

でも残念ながら、これまでと違うことをしようとすると、その途端にこれまでの自分の思考パターン、行動パターン、習慣…そういったものが、必ず邪魔をしてきます。

例えばA君という男の子がいて、彼には受験で合格したいと思っている学校があるとする。でもA君は、これまで遊んでばかりでろくに勉強してこなかったので、どうやったって合格は無理。

「じゃあ合格できるように、今から受験日まで猛勉強しよう!」
A君は、そう固く決意しました。

これを見て、あなたはどう思いますか?これまでろくに勉強をしてこなかった人間が急に猛勉強できると、あなたは思いますか?勉強する習慣の身についていない人間が、長時間机に座ってひたすら集中して勉強し続けることが出来ると思いますか?

正直言って、難しいですよね。遊んでばかりで勉強する習慣の全く身についていない人間が急に勉強しようとしたって、出来ないんです。

机に座っても、まず勉強の仕方が分からない。勉強に興味が無いから、いくらやっても頭に入らない。面白くないから、スマホをいじり始める。すると、いつもの遊び友達から誘いの連絡が入る。次第に我慢が出来なくなり、とうとう遊びに出かける。
そうやって、いつものパターンに戻っていってしまうのです。

じゃあどうすればA君は、猛勉強するようになるのか?

例えば塾に行くなどして勉強せざるを得ない環境に無理矢理追い込むとか、スマホなど集中力を乱すものを全て取り上げるとか、いろいろ方法は考えられると思います。でも、それ以上に大切なことがあります。

一度身に付いた習慣や行動パターンというのは、ちょっとやそっとじゃ変わりません。変えようと無理矢理抑え込んでも、結局は元のパターンに戻ってしまうのです。

なぜかというと、新しいパターンに変えていくより、これまでのパターンを続けていく方が自分が楽だからです。よく分からない新しいことをするより、これまでやってきたことを続けている方が先のことも予測できる、つまりリスクが低いと本能が感じるからです。新しいこと・慣れないことをするというのは、実は思った以上に精神的にストレスがかかることなのです。

だから習慣や行動パターンを変えるためには、そんなストレスやリスクを冒してまでも変えなければならない「行動を変えるための理由」が必要なのです。どうしても行動を変えなければならない、変えなければ困ることになってしまう、そんな「行動を変える必要性」が無ければ習慣や行動パターンは変わらないのです。

そう、「自分の思考パターンや行動パターン・習慣や悪い癖などを変えることによって社会的に成功した人間・幸せな人生を掴んだ人間」というのはみな、変える必要性に迫られたからこそ変える努力をしなければならなくなり、その結果として変わることが出来たのです。実は僕らの人生というのは全て、必要性によって創られているのです。

例えば人の能力などは、必要に迫られることによって伸び、逆に必要に迫られない能力は基本的に成長することはない、場合によっては使わない能力なんかはどんどん退化していきます。

僕は学生時代、英語の科目が好きでした。英語以外の成績がほぼ全滅状態だった僕はひたすら英語の成績を伸ばし、大学受験も英語と得意の国語でほとんど乗り切りました。

でも社会人になると、好きだった英語の能力ではなくコミュニケーション能力が求められるようになりました。これまでいわゆる対人恐怖症だった僕は、とても苦労してしまいました。でもそのお蔭で、コミュニケーション能力は飛躍的に上がり、今ではこうして人間関係に関する情報を発信するまでに成長しました。

そして必要の無くなった英語はというと、すっかり錆び付いてしまい、今では全く役に立たないレベルにまでなってしまっています。

また、よく「英語が喋れるようになりたかったら、英語圏の国に住め」なんて言いますよね。実際に英語圏の国に住んで生活しようとすれば、当然ですが英語を話せないといけません。英語が話せないと日常生活の全てに支障が出て、どうにもならなくなります。つまり英語圏の国で生活すれば、毎日英語を話す必要に迫られることになる。だから嫌でも英語の能力がグングン伸びていき、短期間で英語が話せるようになってしまうのです。

そしてこれは、自分の思考パターンや行動パターン・習慣なんかも同じです。変える必要に迫られていなければ、いくら変えたいと思ってもなかなか変わらない。逆に、変える必要に迫られれば、自分が変えたくなくても変わらざるを得なくなる、嫌でも変わっていってしまう。

ということは、この法則を自分自身に当てはめてみればいいのです。
今の自分の人生に不満があるのなら、
「一体何が不満なのか?」
「具体的にどういったことに不満を持っているのか?」
といったことを、自分の中で出来る限り細かく明確にする。

そしてその不満を放置したままにしておくと、それによって
「この先どんな困ったことが起こるのか?」
「どんな辛い未来が待っているのか?」
「どんなつまらない人生になってしまうのか?」
といったことを今現実に起こっているかのように、よりリアルに想像し、自ら不安をあおる。

そして、それらのことを踏まえた上で
「じゃあ、これから自分はどうしたいのか?」
「どのようになっていきたいのか?」
「どのような行動・どのような道を進めば充実した人生になるのか?」
を自分に問いかける。

そうして自分の進むべき道・自分の取るべき行動がはっきりと決まれば、後はそれ以外の道・それ以外の選択肢を思い切って捨てるだけ。そうすると、もう後戻りは出来ない。もうその道を進むしかありません。

そうなると、あなたの中のスイッチが「カチッ」と入ります。自分の進むべき道を、限りなく100%に近い力で突き進むことが出来るようになるはずです。

でも、ここでもし別の選択肢・別の道を作ってしまえば、その瞬間あなたの脳は「自分の選んだものが、自分にとって必ずしも必要というわけではないんだ」と判断します。「これでダメになっても他にも道はあるんだから、そこまで頑張る必要も無い」そう考え始めてしまうのです。その結果あなたの力は分散されていき、自分の望む現実・望む人生を掴むことは出来なくなるのです。

今のあなたに「どうしても進みたい道」や「どうしてもやり遂げたい事」、または「どうしてもやり遂げなければならない事」があるのなら、それに向かって進む道以外の選択肢は出来る限り捨ててください。出来る限り、逃げ道を無くしてください。

「もう、この道を進むしかない」
「どうしても、これをやり遂げないといけない」
「これをやり遂げる以外に、他に道はない」

そうやって必要に迫られると、「カチッ」と本気モードのスイッチが入ります。頭はそのことに集中し、やがてそれを達成するための能力が伸び始めていきます。

かつての日本は、大多数の人間がいわゆる中流階級だと言われてきました。だからあまり人生を深く考えず、みんなに合わせて同じようにしていれば、誰もが普通の生活をしていける時代でした。サラリーマンをしていれば、定年まで会社が責任を持って面倒を見てくれる、そんな終身雇用制度もありました。景気も良く、会社が倒産することなんて滅多にない。とりあえず会社にぶら下がっていれば、生きていけました。

でも僕が社会に出る頃は、既に就職氷河期が始まっていました。大企業の倒産、30代からすでにリストラの対象、減給、ボーナスカット…そんな言葉があちこちで躍り始めていました。この日本は今も景気が回復する見込みも無く、僕らを取り巻く状況は悪くなっていく一方。これまで日本の大多数を占めていた中流階級は、どんどん脱落していっています。

これまでのように周りのみんなと同じように合わせ適当に生きていては、もう通用しない。小手先のごまかしではやっていけない弱肉強食の世界が、目の前に広がっています。人生を本気で生きなければ、僕らは間違いなく脱落していきます。

あなたが今どんな状況に置かれているのか、僕には分かりません。でもこうして僕の話を聞いてくれているということは、「今の人生を変えたい」、そう思っているのですよね?あなたが本気で自分の人生を変えたいのであれば、必要の無い選択肢は捨て、退路を断ち、自分の決めた道に進むしかない状況・前に進むしかない状況を作り出してください。迷いや言い訳の一切出来ない状況を自ら作り出してください。

やり遂げたいこと、達成したいことがあるのなら、
・それを、いつまでにやるのか?
・いつまでに、どこまでやるのか?
・どのような状態になれば、達成したことになるのか?
達成するための日程や計画を、現実的に自分が達成可能かどうかを検討しながら具体的に細かく決め、一旦決めたらそれ以外の選択肢は排除して下さい。

もし途中で変更があるとしても、それは進捗状況によって計画を見直したり、達成するための方法を練り直すということであって、自分の向かう方向に対しては決してブレないでください。そこがブレてしまえば、その途端に「それをやらなくてもいい理由」や「出来ないための、もっともらしい言い訳」が頭の中に噴き出します。決してブレてはダメです。

人生において何が正解かは、誰にも分かりません。その時に良いと思っていた決断が本当に正しいかどうかは、おそらく自分が死ぬ時になってみないと分かりません。だから、どんな道を選ぶかというのももちろん大切ですが、自分の選んだその道でどのような生き方をするのかということが一番大切なのではないかと僕は思っています。目指す道を、共に全力で駆け抜けていきましょう!

 

ということで、そろそろ今回の話を終わらせてもらいます。次回は、これまで話してきた内容を加速させるために僕自身が日頃からやっている僕のオリジナルスキルをあなたにお伝えしようと思います。

楽しみにしていてください。

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